

©2005 M&M Adams Apples APS.




INTRODUCTION

迫りくる試練の嵐とブラックユーモアの果てに“奇跡”が舞い降りる

美しい田園風景のまっただ中でイヴァンとアダムが対面する冒頭から、誰もがこんな展開を想像するだろう。「罪を犯した者が善良な牧師のもとで人間愛に目覚め、社会復帰への道を歩み出す」。ところがその予想は根こそぎ覆され、銃弾が飛び交う過激なバイオレンス、不条理なユーモアが渦巻く映像世界へと観る者を誘っていく。
アダムは「根っからの悪党」と自ら豪語するならず者だが、大いなる矛盾を抱えた牧師イヴァンと2人の前科者は、アダム以上に病んだクレイジーなキャラクターだ。人間の心理に潜む暗黒面をえぐり出すストーリー。そこに仕掛けられた“奇跡”の意味とは?人は変わることができるのか、一度壊れた人生をやり直すことは可能なのか、そして本当の希望や幸せはどこにあるのか。そんな普遍的かつ根源的なテーマを、比類なきユーモアとアイロニーに満ちた切り口で描いてみせた衝撃作である。
STORY

人生の道標を見失い、壊れた人々が集う田園の教会
仮釈放されたスキンヘッド男のアダムは、更生プログラムの一環で田舎の教会へ送られる。指導役の聖職者イヴァンは快く迎え入れるが、ガチガチのネオナチ思想に染まったアダムは神も人の情けも信じていない。ここで取り組むべき目標をイヴァンに問われたアダムは、教会の庭のリンゴで「アップルケーキを作る」とその場しのぎの答えを返す。だが、この教会はどこかおかしい。ここに住みついた2人の前科者、パキスタン移民のカリドとメタボ男のグナーも、実は悲惨な人生を歩んできたイヴァンも…。アダムはイヴァンの自己欺瞞を暴こうとするが、時同じくしてアダムのアップルケーキ作りを妨害するかのように、災いが次々と教会に降りかかる。それは悪魔の仕業か、それとも神が人間に与えた試練なのか……。




いま、デンマークの映画が面白い!
誰しも“心の闇”を抱えざるを得ない時代に、堂々と人間讃歌の映画に挑戦(チャレンジ)する。こんな作り方があったのかと感嘆した。
いま、デンマークの映画が面白い!
スタジオジブリ 鈴木敏夫
よくぞここまでマッツの魅力と才能を引き出してくれました……アーメン。
森 百合子( 北欧ジャーナリスト)
罪、苦しみ、死といった深刻なテーマを用いながら、作品全体はひとつの楽曲のようになっている。
そこに、この映画の意義がある。
加藤 隆(千葉大学教授/ 神学博士/ 文明評論家/ NHK E テレ「100 分de 名著/ 旧約聖書」指南役)
狂信者は自分の死には気づけない。だから死ぬことすら叶わない。感動仕立てのトラップ!この映画はヤバすぎる。
代沢 五郎( O.L.H. (a.k.a. 面影ラッキーホール))
ベルイマンがバイオレンス映画を撮ったらこんなイカれた映画になっただろう。
越前敏弥(文芸翻訳者)

CAST&STAFF

イヴァン役
マッツ・ミケルセン
主演を務めるのは、イェンセン監督と何度もタッグを組んできたマッツ・ミケルセン。日本でも絶大な人気を博し、今やすっかり“北欧の至宝”という呼び名も定着した名優が演じるのは、聖人君子のような人物として登場する主人公イヴァンだ。極端なポジティブ・シンキングを貫き、ことあるごとに他人に議論をふっかけ、「失敬な!」が口癖。尋常ならざる秘密を抱え、周囲を唖然とさせる奇行を連発する牧師の驚くべき宿命を、卓越した表現力と個性で演じてみせた。デンマークのオーフスの国立演劇学校で学び、『プッシャー』(’96)で劇場映画デビューし、母国で俳優として活躍。その後、ハリウッドにも進出し『007 カジノ・ロワイヤル』(’06)で悪役ル・シッフルを演じて知名度を高めた。『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(’12)で主演。トマス・ヴィンターベア監督のデンマーク映画『偽りなき者』(’12)でも主演し、第65回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。『ハンニバル』(’13~’15)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(’16)、『永遠の門 ゴッホの見た未来』(’18)、『ポーラー 狙われた暗殺者』(’19)と、話題作に出演し続けている。

アダム役
ウルリッヒ・トムセン
劇中で“一番まともな”ネオナチ男アダムを迫力たっぷりに演じ、ミケルセンとのスリリングな見せ場を生み出しているのは、実力派俳優ウルリッヒ・トムセン。デンマークの演劇学校で学び、コペンハーゲンの舞台で活躍。その後、トマス・ヴィンターベア監督『セレブレーション』(’98)やスザンネ・ビア監督の『ある愛の風景』(’04)『未来を生きる君たちへ』(’10)などの名作に次々と出演する。『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(’99)『キングダム・オブ・ヘブン』(’05)『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(’15)をはじめ、ハリウッド作品でも活躍している。

サラ役
パプリカ・スティーン
1964年、コペンハーゲンの西隣にあるフレズレクスベア(Fredriksberg)で、音楽家の父と俳優の母の間に生まれる。オーデンセ劇場の俳優養成所で学び、コペンハーゲン王立劇場など多くの舞台で俳優として、また映画やテレビでも活躍。ドグマ95の最初の3作品(ラース・フォン・トリアー監督『イディオッツ』(’98)、トマス・ヴィンターベア監督『セレブレーション』(’98)、ソーレン・クラウ・ヤコブセン監督『ミフネ』(’99))に出演し、国際的にも注目を集めるようになる。2002年にはスザンネ・ビア監督/アナス・トマス・イェンセン脚本の『しあわせな孤独』に出演、ボディル賞とロバート賞のそれぞれで助演女優賞を受賞した。このコンビの作品には欠かせないキャストでもあり、本作『アダムズ・アップル』のほか、日本公開作『愛さえあれば』(’12)など多くの作品に出演している。本作では、妊娠し、医師から障害のある子どもが生まれる恐れがあると告げられ、そのことに悩み、イヴァンのもとへ相談しにやって来るサラ役を好演。2004年には一人娘を亡くした若い夫婦の悲しみを描いた『Aftermath』で監督デビューも果たすなど、多彩な活動をみせている。最近の出演作品にブライアン・デ・パルマ監督の『Domino』(’19)、本人監督・出演作品に『That Time of Year』(’18)などがある。

グナー役
ニコラス・ブロ
1972年3月16日、コペンハーゲンに元劇場支配人で俳優・監督の父と、女優の間の次男として生まれる。兄と妹も共に俳優である。また2人の叔母もデンマークの女優という芸能一家で育った。1994年から98年までデンマーク国立舞台芸術学校で学び、94年に初舞台を踏む。1999年に劇作家デビュー。毎年発表されているデンマークの演劇賞では、1999年にタレント賞、2002年に助演男優賞を受賞、2007年および08年にはデンマーク王立劇場の2作品で主演男優賞を受賞している。また『The Killing/キリング』シーズン2(2009)や『THE BRIDGE/ブリッジ』シーズン3(2015)などテレビドラマでも活躍するほか、アナス・トマス・イェンセン作品をはじめ多くのデンマーク作品で演じる。ハリウッドではスピルバーグ監督の『戦火の馬』(2011 )に出演。

カリド役
アリ・カジム
1973年4月26日、コペンハーゲン生まれ。移民が多く住むコペンハーゲン・ナアアブローの移民二世を描いた映画『Pizza King』(1999)で長編劇映画デビュー。その後、テレビドラマや映画に出演するようになり、本作では一癖あるデンマーク語で会話する中東系移民のカリドを好演。2006年にデンマーク公共放送のクリスマスの子ども向け特別番組に出演。その翌年、テレビドラマ『キリング』シーズン1に出演。俳優として活躍する一方、ラッパーとしても2006年にアルバム「Gadedrøm(ストリート・ドリーム)」でデビュー。アルバム収録曲「Spørgsmå(l クエスチョン)」がヒットした。また、2013年、イスラム系の慈善団体の立ち上げに関わってから社会活動にも注力、2016年には自らの手で「リクリエイト」という若者の心理療法を行う団体を設立している。
監督・脚本

アナス・トマス・イェンセン
旧約聖書の「ヨブ記」と“アダムのリンゴ”の寓話をベースに、この奇妙にして深遠な映画を撮り上げたのは、デンマークを代表する名匠スザンネ・ビア監督の『しあわせな孤独』(’02)『アフター・ウェディング』(’06)『真夜中のゆりかご』(’14)などに脚本を提供してきたアナス・トマス・イェンセン。監督としても『エレクション・ナイト』(’99)でアカデミー賞短編映画賞を授賞。さらに、『フレッシュ・デリ』(’03)『メン&チキン』(’15)といったマッツ・ミケルセン主演の長編などによって、北欧映画通をうならせてきた。

THEATER

新宿シネマカリテ
(上映終了)